GREEN×EXPO 通信 2024(令和6)年夏号 Vol.2(5月発行) ■表紙 (画像説明)蜷川実花さんによるキービジュアル ■2ページ 【ABOUT GREEN×EXPO 2027】 地球的規模の課題解決のために、緑の視点から対話と交流を/国際条約に基づく世界的プロジェクト「2027年国際園芸博覧会とは?」 GREEN×EXPO 2027 はA1クラス(最大規模)の「国際園芸博覧会」で、AIPH(国際園芸家協会)が承認し、同時にBIE(博覧会国際事務局)の認定を必要とする国際条約に基づく「国際博覧会」です。国際博覧会の歴史は1851年に開催されたロンドン万博がその始まり。当時の大英帝国は鉄とガラスを駆使した巨大なガラス温室を展示し、圧倒的な工業力を世界に知らしめました。その後、万博は「産業・科学技術の展示の場」という特徴を共有しながら世界各地で開催され、1928年には人類の進歩や将来の展望を示すものであることを定義した国際博覧会条約が制定されました。さらに、1994年のBIE総会決議により「人間・環境の課題解決の提言の場」という趣旨が加わり、その役割は拡大しています。 一方、国際園芸博覧会は日本では1990年「国際花と緑の博覧会」が2027年と同様A1クラスとして大阪で初開催されました。その後日本では、ガーデニングブームが起き、花苗生産量が16倍になるなどの経済効果がもたらされました。しかし、もはやそのテーマは園芸産業の発展に限定するものではありません。というのも、BIEが万博のテーマとする人間・環境の課題を緑抜きに語るのは不可能であり、むしろ国際園芸博覧会は万博の本流 を担う世界的プロジェクトであるからです。人類の生存基盤である健全な地球のためにCOP10が定めた「自然と共生する世界」の実現リミットは2050年。23年後の世界のために、GREEN×EXPO 2027が果たすべき使命は非常に大きいものとなるでしょう。 ・1990年、自然と人間との共生をテーマに大阪で開催されたA1クラスの「国際花と緑の博覧会」。開催後に空前のガーデニングブームが起き、花苗の生産量が16倍に増えるなど、社会に大きな影響を与えた。 (写真)大阪花博の写真 <数字で見る2027年国際園芸博覧会> クラス A1(最上位)クラス(AIPH承認+BIE認定) 開催日数 192日 博覧会区域 約100ha(会場区域80ha) 参加者数 1,500万人(有料来場者数1,000万人以上) 経済波及効果 7,310億円(生産誘発効果) ○「幸せを創る明日の風景」を実現する/5つのコンセプトをもつ共創の舞台「Village」 GREEN×EXPO 2027では、自然と共生する暮らしを支えるコミュニティの形成を目指して、5つのテーマを掲げた“Village”を共創します。5つのコンセプトをもつVillageは、「幸せを創る明日の風景」を実現する大地の実験場となり、様々な展示・体験プログラムなどを通じて各テーマを共有し、主催者と参加者によって未来の持続可能な社会を表現します。 (画像)Villageの配置図とパースイメージ ・「Urban GX Village」カーボンニュートラル社会にGXで挑む GXの実装の姿を可視化し、カーボンニュートラル社会の未来を示す。 最先端の科学、脱炭素技術など、ミライの「ワザ」で、持続可能な循環型社会と都市の姿を具体化し、体感していただく。 ・「Craft Village」自然とのつながりの中で育まれた智慧・技術と出会う 伝統的なサーキュラー・エコノミーを再発見・再評価する。 温故知新-日本人が古来築いてきた循環型の社会を見つめなおし、次世代のグリーン社会のあり方を考え、発信する。 ・「Farm & Food Village」「農」と「食」を通じてウェルビーイングを追求する 農と食の多様性を知り、楽しみ、味わう。健やかに生きる喜びを。 農、食、健康に関する課題解決、その先の幸福な生き方を、体験やテクノロジーによって示す。 ・「Kids Village」これからの地球を生きる子どもたちが自然と世界を学ぶ 次世代を担う子どもたちに、リアルな感動と気づきの種をまく。 大地を感じる空間で、五感をフルに活用した学び、遊び、交流を通じて、知識と体験を統合させ、地球の未来を考える。 ・「SATOYAMA Village」自然と人、人と人とが関わりあい、共に生きる 里山に学ぶ生物多様性とネイチャーポジティブ。接続可能な社会に向け、多様な主体が集い、共創する。 自然と人とが共生する里山の考え方を継承しつつ、市民と企業との共創、市民参加活動により、未来のグリーン社会を形作っていく。 ■3ページ 【INTERVIEW】 ○GREEN×EXPOラボ チェアパーソン 涌井史郎氏に聞く/GREEN×EXPO 2027が目指すもの GREEN×EXPO 2027の総合監修、会場のランドスケープを担当する涌井史郎氏に、博覧会の開催意義や目指すべき成果について聞きました。 GREEN×EXPO 2027の開催意義とは? GREEN×EXPO 2027のテーマは「幸せを創る明日の風景」です。さて、幸せとは何でしょうか。お金でしょうか。名声でしょうか。これらを追い求め続けた結果、我々は幸せの基盤を失いつつあります。 近代文明はそのことをあまりにも意識せずに経済成長を推し進めた結果、CO2の排出量を押し上げ、気候変動を起こし、たった40~50年のうちに約4 万種もの生物の絶滅を引き起こしました。これは我々自身の生存をも、おびやかす事態です。幸せは生存の上に成り立つものです。私たちは幸せの盤石な基盤を取り戻すために、一刻も早く多様な生物とともに生きる社会の再構築に着手する必要があります。 地球は半径6,400kmの大きな星ですが、生き物が生きられる生物圏の厚みはたった20~ 30kmほどです。球体を包む極薄い膜のようなものをイメージしていただくといいでしょう。その薄い膜の中には、約3,300 万種の生物が生きており、じつはそのほとんどは植物で構成されています。彼らは地球のエネルギーと物質の再生、循環を担っており、人類はその恩恵を受けて生存しています。 2027年国際園芸博覧会(GREEN×EXPO 2027)は、単に美しい草花を展示するだけの博覧会ではなく、自然とともに生きる社会の再構築のために、世界中から、えいちを集め、GX社会の実装に向けて世界の人々がともにこの地球規模の課題に取り組む場です。そして、一人一人が植物や自然をもう一度学び、「幸せを創る明日の風景」のための、社会的だい変容の契機となることこそ、この博覧会の大きな意義です。 開催国日本から発信できるメッセージとは? 日本は世界のなかでも生物の多様な国であり、生物とともに生きる社会を伝統的に築いてきました。その一つの例が里山です。例えば、里山の雑木林の樹木は株を残して上だけ伐採し、薪として燃料にしたり、落ち葉は畑の堆肥として使い、山を手入れすることでその豊かな恵みを次世代へつないできました。里山の暮らしは自然を資本(キャピタル)とし、その利息で暮らしを営み、資本である自然を次世代へつないでいく、今まさに我々が目指すべきライフスタイルです。また、自然は豊かな恵みを与える一方で、豪雨や土砂災害といった被害をもたらします。それに対しても、日本人は自然を見定め、揺れを逃す建築工法や川の勢いをコントロールする治水技術を生み出すなど、自然をいなして上手に付き合う方法を多く培ってきました。この伝統文化を再評価し、現代の最先端科学や脱炭素技術をかけ合わせることによって、より優れた現代の里山、つまりグリーンインフラが構築できるはずです。 「GREEN×EXPO 2027」の会場は、神奈川県横浜市のなかでも農地や緩やかな起伏のある草地など、豊かな自然が残る場所です。私たちは今、残されたこの貴重な自然資本を活かし、自然エネルギーの活用も視野に入れた会場づくりを目指しています。また、GX(※)や食などをテーマとした5つのビレッジを出展者の皆さまと我々主催者とで、ともに作り上げていきたいと考えています。多くの方にご参加いただき、ともに素晴らしい会場を作りあげ、私たち日本人が培ってきた新旧の知恵や技術を世界へ発信したいと願っています。 GREEN×EXPO 2027が目指す成果とは? 博覧会会場はグリーンシティとしての都市基盤整備が根底にあるので、グリーンシティの実現化が一つ。それを踏まえたうえで、新たなグリーン社会システムがショーケース的に示されるのが博覧会ですが、会期中にはまずたくさんのかたに足を運んでいただき、人類が抱えている課題と、植物がその解決の糸口となることを知ってもらうことが重要です。前述した課題に加え、加速するデジタル化は不眠などの心療内科てき、生理疾患を呼び起こすことが懸念されています。デジタルが心身へ及ぼす不具合への処方箋は、アナログ、つまり自然と触れ合うこと。ウェルビーイングとは、居心地がよく健康であるということです。それにはまず、他の生き物たちが我々を支えていることに感謝する必要があり、そうした気づきの中から小さな喜びを見つけていくことが幸せにつながるのではないでしょうか。幸せや豊かさは追い求めるばかりでなく、深める必要があります。そして、社会は成長ばかりでなく、成熟する必要があります。我々は長らく車が空を飛ぶ未来を夢見てきましたが、未来は空ではなく、地べたにあると私は思います。この万博がそうしたことを考えるきっかけとなり、一人一人の選択の先に幸せな明日の風景が広がることこそ万博の大きな成果です。この「GREEN×EXPO 通信」では自然とともに生きるすべや楽しさ、豊かさについてさまざまな切り口で話題を提供しますので、ぜひ引き続き愛読いただきたいと思います。 ※GX(グリーントランスフォーメーション)/温室効果ガスを発生させる化石燃料から太陽光発電などの自然エネルギー中心へと転換し、社会システム全体を変革しようとする取り組み。 涌井史郎(SHIROU WAKUI) GREEN×EXPOラボ チェアパーソン/東京都市大学環境情報学部 特別教授 数多くの造園・ランドスケープアーキテクトを手がけ、2005年の愛・地球博では会場演出総合プロデューサーに就任。 GREEN×EXPO 2027では、企画・運営等のディレクションを統括。「景観十年、風景百年、風土千年」を提唱、人と自然の空間的共存をテーマに多くの作品や計画に携わる。 (写真)涌井史郎さんの写真 【COVER PIC】 ○GREEN×EXPO公式クリエイター蜷川実花氏と共に制作した新たなキービジュアルを発表 新たなキービジュアルの製作にあたり、たくさんの写真を候補として出したところ、多様な花が咲いていること、そして「根や土」といった植物に欠かすことのできないものが垣間見えることから今回のGREEN×EXPO のテーマである「幸せを創る明日の風景」にも繋がるのではないかと、涌井先生をはじめとするラボの方々にこの写真が良いという声をいただきました。2027 年の開催を楽しみにしています。 蜷川実花(MIKA NINAGAWA) 写真家・映画監督 写真を中心に、映画、映像、空間インスタレーションも多く手掛ける。 木村伊兵衛写真賞ほか数々受賞。『ヘルタースケルター』(2012)はじめ長編映画を5作、Netflix『FOLLOWERS』を監督。最新写真集に『花、瞬く光』。 個展「蜷川実花展 : Eternity in a Moment 瞬きの中の永遠」(TOKYO NODE 2023年-2024年)にて25万人を動員。 (写真)蜷川実花さんの写真 ■4ページ 【GREEN×EXPO 2027 NEWS】 ○2024年3月19日公式マスコットキャラクターデザイン決定 公式アンバサダー芦田愛菜さん「長く親しまれ、愛される名前に」 開催3年前となる3 月19 日に公式アンバサダー芦田愛菜さんにご登壇いただき公式マスコットキャラクターデザイン発表・名前募集の記者発表会を、おこないました。デザインは、指名コンペティションによって選出された牧野惇さんの作品です。 芦田愛菜さんコメント「自然や地球との新たな関係を育むコミュニケーター」として、今後はさまざまな機運醸成活動に活躍します! 公式マスコットキャラクターの名前は公募にて6月に決定(予定) 本展覧会のテーマやメッセージを体現し、誰からも親しまれるシンボルとして「公式マスコットキャラクター」が決定!ハートの核を持ち、地球上の植物と生きものの生命を内包した精霊で、私たちと自然の新たな関係を育むチャンスとなってくれるキャラクターです。 ○出展募集(Village出展、花・緑出展)について GREEN×EXPO 2027 は、様々な企業・団体のみなさまが幅広く出展・参加いただけるメニューを用意しています。出展に関するメニューは、大きく分けて2種類です。どの出展も共通してGREEN×EXPO 2027 が掲げるテーマ「幸せを創る明日の風景」のもと、〈自然との調和〉〈緑や農による共存〉〈新産業の創出〉〈連携による解決〉という4つのサブテーマのいずれかに適合する出展を募集します。みなさまに出展いただくことで、自然・ひと・社会が共に持続するための最適な解決策を発信し、持続可能な地域・経済の創造や社会的な課題解決に貢献する新たな博覧会を目指します。積極的な出展・参加をお待ちしています。 <出展の詳しい情報はこちらから/7月〆切> ・出展の概要(出展内容に関する要件、出展期間、出展場所) ・募集内容(出展に係る条件、考慮いただきたい事項、作業及び経費負担の役割分担) ・コンペティションについて ・出展者への特典 ・応募手続き(出展参加資格、今後のスケジュール)など 詳しい内容については上記URLか二次元コードからご覧ください。 <出展メニューは2種類> 「Village出展(企業・団体など)」5月31日(金)応募受付開始 会場内の5つのVillage(2面参照)でGREEN の力と産業活動が融合した姿を示し、テーマ「幸せを創る明日の風景」を感じさせる屋外空間(庭園、広場等)・展示施設を整備、独自の体験やコンテンツを提供いただく出展方法です。 ・出展料:出展区画の面積に「20,000円/㎡」を乗じた額 ・面積:1区画約1,000㎡~3,000㎡ ・期間:開催中全期間(192日間) ・出展キーワード:バイオテクノロジー、グリーンテクノロジー、水素等次世代エネルギー、CCU 技術、次世代太陽電池、木造建築・空間木質化、ZEB・ZEH、グリーンインフラ、EV、スマート農業、フードテック、バイオマス、ボタニカル製品、ヘルステック、生分解性プラスチック、人工光合成、バイオフィリックデザイン、サーキュラーエコノミー、脱プラスチック・脱炭素行動、環境学習 等 「花・緑出展(企業・団体・個人、自治体)」応募受付中 GREEN×EXPO 2027のテーマ等に適合する庭園・花壇作品や園芸作品等を展示するとともに、コンペティションに参加することで、みなさまがお持ちの技術や魅力を国内外へ発信いただけます。 ●屋外出展 ・出展料:無料 ・面積:1区画25㎡(複数区画使用可) ・期間:開催中全期間(192 日間) ・展示例:優れた造園技術や庭園デザイン、花壇作品、地域を代表する花き園芸植物、園芸資材、環境・グリーンインフラに関する展示 等 ●屋内出展 ・出展料:無料 ・面積:1区画20㎡(複数区画使用可) ・期間:短期間出展(9日間)、全期間出展(192 日間) ・展示例:花や緑で装飾された屋内庭園、切り花などの生産品や、かき園芸植物、フラワーアレンジメント、生け花、盆栽 等 ※コンペティション 本博覧会では、技術や知識を競い、かき園芸・造園業界における技術の向上、産業の発展、文化の振興等に貢献することを期待して、コンペティションを実施します。 ※出展者への特典 出展者には、参加形態・規模に応じて、次に掲げる特典の一部又は全部の提供を予定しています。呼称権、会場内名称表示権、公式ロゴマーク使用権、式典等への招待。 ※その他の参加メニューに、寄付金、人材支援等があり、さらに営業参加(テーマ営業出店、一般営業出店等)、催事参加、海外出展協力、展示や出展への協賛、施設協賛・運営協賛、広報協賛については今後随時発表予定です。 【開催概要】 名称 2027年国際園芸博覧会 (International Horticultural Expo 2027, Yokohama, Japan) 正式略称 GREEN×EXPO 2027 (グリーンエクスポニーゼロニーナナ) 開催場所 神奈川県横浜市 開催期間 2027年3月19日(金)〜 2027年9月26日(日) 博覧会区域 約100ha(内、会場区域80ha) クラス A1(最上位)クラス(AIPH承認+BIE認定) 参加者数 1,500万人 ・地域連携や ICT(情報通信技術)活用などの多様な参加形態を含む ・有料来場者数:1,000万人以上 テーマ 幸せを創る明日の風景 〜Scenery of the Future for Happiness 〜 公式サイトhttps://expo2027yokohama.or.jp/ 公式アカウント インスタグラム、X、フェイスブックでも情報を発信しています。 発行 公益社団法人2027年国際園芸博覧会協会